あの月を飼う日まで

アニメ×邦楽ロックの感想ブログ、たまに備忘録

【アニメ感想】約束のネバーランド Season 2 OP -ネガポジ転換-

早いもので2021年もTVアニメが始まりましたね。

今回は約束のネバーランド、通称約ネバ第2期のOPについて。因みに自分は原作未読のアニメ組。

 


TVアニメ「約束のネバーランド」Season2 ノンクレジットオープニング

楽曲:秋山黄色『アイデンティティ

絵コンテ・演出:山本健 作画監督:嶋田和晃

 

何故かYouTubeでは楽曲の音質が悪い点は置いといて。

第1期第1話での鬼との初遭遇など数々の印象的なシーンを担当してきた山本健さんによるOP、絵コンテ・演出を手掛けるのは昨年末に発表されたMV『約束』以来の2度目。しかしながら氏の個性を出しつつ一貫性のある映像に仕上がっているなと。

個人的に気になったところを以下にピックアップ。

 

 

対比描写

 

同シチュエーションを続けて映すことで人間と鬼視点での違いを明示。

 

①花

 

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人間:色も品種も多彩な花々 鬼:赤い花の一種

赤い花はヴィダと呼ばれるこの作品オリジナルの植物で、鬼が神に糧を捧げると共に肉の血抜きをするために用いるもの。しかし、人間にしてみれば死の象徴ともいえる存在。生命と死の対比。因みにこの花に埋もれているキャラの正体は後に明らかになるんでしょうか。

 

食物連鎖

 

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人間:うさぎを食べる 鬼:人間を食べる

人間も実は鬼に食べられる立場であり、食物連鎖の頂点ではなかった。それはそうと食べるにしてもうさぎが原型を留めすぎだし、食前に「いただきます」をする鬼は礼儀正しい。残忍とされる鬼も信仰心がある点から知性の高さが感じられる。

 

③カメラワーク、BOOKのスライド方向、キャラの配置

 

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人間: 下手 鬼:上手

冒頭の手のカットでもこの方向。一般的な演出での力関係は、下手 < 上手 として描かれるため、今回もそれに則った形だと思われる。それでも逃げずに堂々と対峙する人間。因みにBOOKとは、キャラより手前に配置される草木などのこと。

 

比喩表現

 

①蝶

 

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目が覚めても 夢を見てた
僕らの一瞬が 輝くストーリーの

第1期でも時折登場した蝶、地を這う幼虫から蛹を経て成虫となり空へ羽ばたくその姿から変貌や成長の象徴として描かれることも多い。また、楽曲の歌詞から中国の説話「胡蝶の夢」に倣い、夢と現実の境目が曖昧になることも意識したものと思われる。

 

②手

 

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Bメロで人間と鬼の重なり合った手と鎖のカットが続けて映る。そのまま読み解けば、人間と鬼の邂逅により、鬼による支配・束縛が始まったことの比喩。画面内に幾度にも重なることで空白が少なくなり閉塞感が増す。

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また、上記の内側へ狭まる手の交差に対して、サビでは逆に外側へ広がる手を伸ばす構図となり、解放を掴み取ろうとする表現に変化。

 

 

時間経過による変化

 

映像中における同シチュエーションでも変化をつけることでストーリー性を演出。AメロBメロのネガティブからサビでポジティブへのイメージ転換。一部対比表現も含む。

 

①時計の針

 

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前:鬼側の花、時が止まる 後:人間側の花、時が動く

映像の終わりに止まっていた秒針が時を刻む。人間側の前進、物語の始まりのイメージ。

 

②エマに寄り添う仲間

 

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前:エマを背にフェードアウト 後:エマと同じ向きでフェードイン

ヴィタが足元に広がる外の世界で、これまで次々と犠牲になっていった仲間達と現在共に歩む仲間達、そこには鬼だが協力関係を築いたソンジュとムジカの姿も。

 

③キャラの表情

 

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前:隠れた表情、陰り 後:映る表情、笑み

数千の時を超えまた会えたら
絶望の少し先で笑うんだよ

自分のそばにいる存在が失われていくことで持ち前の明るい表情に陰りのあったエマに共に歩む仲間を通じて笑みが戻る。農園の外に人間だけの世界があることを知った。残された農園の仲間達のためにも、希望を胸に踏み出すエマ達。その足に迷いはない。

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第1話で犠牲になったコニーをはじめ、サビ前まで人間側のほとんどは表情が映らない。その中で唯一顔が映るのが主人公のエマと仲間のフィル。農園の真実を知りながらも残る選択をした彼はエマ側の立場であるためだろうか。 

 

④画面の明度

 

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前:明度低め 後:明度高め

AメロからBメロにかけては明度の低い中で鬼の目やヴィダの赤色を際立たせる画面から、サビ以降は明度を高め、最後には希望に満ちた光輝く画面に変化。 

 

 

カット繋ぎ

 

ひと繋ぎの映像として視聴者にとって違和感を与えない作り。

 

①カメラワーク、物体の形状

 

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画面の色味と共に上下に振るティルトアップ ⇒ ティルトダウンにより、ポジティブ  ⇒ ネガティブイメージの転換を演出。また、時計と皿の円形を続けて映すことで、別シチュエーションのカットでも認識の阻害になりにくい狙い。

 

②エマの目

 

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サビに入る前後で白背景を挟んでエマの目のカット、前は焦点を目に合わせている。

サビが明確なJ-POPの構成だとサビ前でメロディが変わったり無音になるタイミングで目の見開きや足の踏み出しのカットを入れる映像が多い。この曲では打ち込みのメロディとドラムの連打が変化している。

 

 

最後に

 

第1期でも演出的な見所が多かった作品なので、それを引き継ぐ形でこうしたOPが観られてたのは嬉しいところ。

今回のOPで好意的だったのが、サビで敢えてキャラを動かさない選択。曲調的にもキャラを走らせたりアクションさせてもおかしくないところを人間と鬼の対峙を明示するために止めたのは思い切ったやり方だなと。

それと絵コンテ・演出を手掛けた山本健さんはスケジュールの都合上、本編には参加していないとのことですが、恐らく第2期では完結まで描けないため、第3期でそのお仕事を観られることを期待します。

本作のEDは紺野大樹さんが手掛けており、そちらも素晴らしいものだったので、今回のOPEDは飛ばせないですね。

 

ここまで読んでいただきありがとうございました。

それではまた。

 

©白井カイウ出水ぽすか集英社約束のネバーランド製作委員会