ついに殻のボスであるジゲン、もとい大筒木イッシキがベールを脱いだBORUTO。今回はそのジゲン対ナルト&サスケによるアクション回のレビュー記事。
BORUTO -ボルト- -NARUTO NEXT GENERATIONS- 第204話『ヤバイ野郎』
絵コンテ・演出:荻原健
作画監督:一ノ瀬結梨、今木宏明、夘野一郎
アクション作画監修:Chansard Vincent
第65話リスペクト
本話数では、2018年に放送された作画回である第65話(ナルト&サスケ対モモシキ戦)を意識したような要素がいくつか見られた。
海外アニメーターの多数参加
まず特徴的だったのは、原画として参加した海外アニメーターの多さ。実に約20人。第65話では約10人が参加していたが、そのときと1人も被っていないのがまた面白いところ。SNSのプロフィール等を確認した限り、恐らくさらに下の世代。
グロス*1を除き海外アニメーターがTwitterなどのSNSを通じて多数参加、かつ主要な場面を担当する流れは、それこそ第65話が先駆けと言っていいだろう。以降、『ブラッククローバー』をはじめとした他作品でも見られることとなる。
これまでもBORUTOには数多くの海外アニメーターが参加してきた。その中で個人的に注目しているのが、Chansard Vincent氏。かつてOP8や第186話でのアクションを手掛けた。本話数では、初めてアクション作画監修*2を単独で務めた。
I had the opportunity to be action supervisor in today's boruto 204
— Chansard Vincent (@Sparkleredpanda) 2021年6月20日
My part was from the Jigen landing on the pillar to the fist fight with naruto,but you can also spot a few of my corrections around the episode, notably around the susanoo part
So many thanks to the team#BORUTO pic.twitter.com/9azdkGTo19
シチュエーション・構図
まず、原作時点から大筒木対ナルト&サスケという組み合わせ、周りに障害物がほぼない開けた荒野とモモシキ戦をイメージさせる。空の色味も赤系を基調とした近しいもの。
画面手前の足元にカメラを置いたロングショットに歩き芝居。相手や相方の位置関係も含めてまず意識したと見て間違いないだろう。普段とは異なるアプローチにより、歩きという単純動作を戦いの始まりを予感させるものへと変える構図。
高速移動時のエフェクトのみの残像表現。初出しは劇場版BORUTO冒頭の小林直樹氏パートだと思われるが、登場回数自体は少ない(第65話と第199話程度?)。色の情報量を減らすことで素早い動きでも煩わしさがない。
アクション設計
ジゲンが使用する棒状の武器を交互に持ち替える、持ち手の長さを活用したアクション。劇場版BORUTOではサスケの飛ばされた草薙の剣をナルトがキャッチして使用するシーンがあったが、相手の武器を奪う描写は珍しい。普段は扱わないものであっても、直ぐに適応できる火影としてのポテンシャルの高さが窺える。
ジゲンの能力によって縮小された杭が一瞬で元のサイズに戻る。その唐突さを少ない原画枚数によってナルトの動きが大振りになることで表現。原作より人数の増えたナルトの影分身を利用した映える広範囲攻撃。
須佐能乎や九喇嘛モードの体を足場にした背動アクション。体格のスケールが大きく異なるからこそできる表現。1カットでカメラはジゲンをフォローしつつも途中で一度追い抜かれることで、より躍動感を際立たせている。加えて、モモシキの場合は同じ体格に変貌して応戦していたため、差別化が図れている描写。
カメラワークによるアクションの魅せ方
さらに特徴的だったのがカメラワーク。主にアクションの魅せ方は、画面内に存在するキャラや背景そのものの動きとそれを映すカメラから成る。本話数では大部分が後者に当てはまる。先述の背動アクションはもちろんだが、アバンのキャラに目立った動きが無いカットにも上空から広角で映しながら動かすカメラにより、画面に動きを作っていた。
Chansard Vincent氏による修正が施されたシーン。以下のツイートのGIFを見れば分かる通り、その違いは歴然。直線的なジゲンの蹴りもカメラの動きを3次元的に変えれば全く印象が異なる画面となる。カットの変わり目に須佐能乎の長い鼻が次カットに蹴りが入る画面中央付近への視線誘導の役割を果たしているのもポイント。
Here is an exemple of the action supervision i did on Boruto 204.
— Chansard Vincent (@Sparkleredpanda) 2021年6月22日
This is Rough Layout so the character arn't really on model yet, but with the red subtitles you can see Vinny-san's original LO.
The part with the blue subtitles is the correction i did on it. pic.twitter.com/sGNfIxt9Sy
これまで氏が担当したシーンを見るとより特徴が伝わりやすいだろう。同じ物体の速さでもカメラを離せば、それだけ対象の移動量が減ったように目に映る。つまり、カメラワークは、体感的な時間をコントロールすることもできる。さすがに全編このカメラワークでは酔ってしまいそうだが、要所で使えば緩急の付け方として効果的。
キャラの表情による緊迫感
Bパートからは、第189話にてキャラクターデザインと作画監督を単独で兼任した夘野一郎氏の作監パートだと思われる。リアル寄りの表情が危機に瀕したナルトとサスケのピンチを演出することに繋がっている。動きが速いアクションであれば多少は省略もできるが、顔アップの芝居ではそうもいかない。誤魔化しのきかないシリアスな場面だからこそ適任。
最後に
BORUTOもいつのまにやら放送4年を越す長期作品に。原作ではこの辺りから物語の根幹が明かされ始め面白くなってくるところですが、アニメも新章『カワキ編 大筒木覚醒』と銘打っているので、長期のオリジナルストーリーも挟まず進行しそうな雰囲気。今後が楽しみな反面、重要な戦いが間髪無く続くので作画面が心配だったり。
記事内で触れた通り、今回は数多くの海外アニメーターが参加していたものの、じゃあ本社のスタッフはどこにいったんだということで、直近の新OPEDやボロ戦に注目したい。
今回はこんなところで、それではまた。