【アニメ】NARUTO THE 作画回セレクション 巻ノ一
9/10よりAmazon Prime Videoにて『NARUTO -ナルト-』(2002~2007年放送)の全話配信が開始。続編『NARUTO -ナルト- 疾風伝』を含めると全720話もあり、一から全話観るのは相当大した奴なので、個人的なオススメ話数をピックアップ。当時リアルタイムで追っていなかった人もそれなりにいると思うので是非参考にして欲しい。
作画回リスト
#19『ザブザ雪に散る…』
波の国編のクライマックス。橋の上という直線のフィールドでも奥行きを感じさせる広角の構図やキャラの重ね具合を調整したレイアウトが目を引く。声優の演技と相まって涙を誘う都留氏と田中ちゆき氏による泣き芝居や、画面が煩雑になりがちな一対多勢アクションを回り込みカメラワークを駆使することで、画面に動きをつけつつ視認性を高めた竹内哲也氏パートが見所。鈴木氏の回ではお馴染みである顎を動かしたリップシンク*1も見られる。なお、直前の#17も本話数と同じ絵コンテ・演出・作画監督の体制。数ある都留氏の回でも最も短いスパンだったり。
#30『蘇れ写輪眼!必殺・火遁龍火の術!』
中忍試験編のサスケ対大蛇丸戦。後の数々の作画回を担当する若林氏、既にOPでは原画を務めていた松本憲生氏の本編初参加回。丸々担当したAパートは必見。原作には無かった入り乱れる木々を活かした縦横無尽のアクション設計が見所。蛇を連想させる大蛇丸の動きのアイデアも面白い。他作品でもオマージュされるワイヤー背動アクションもあり。因みに、作画崩壊として挙げられる某キャプチャのある回だが、あくまで動きを構成する一枚の画であり、アニメーションとして捉えて欲しいところ。個人的には動きのニュアンスが変わる画なので、動画ではなく原画だと思っている派。
#48『我愛羅粉砕!!若さだ!パワーだ!爆発だ!』
中忍試験編の我愛羅対ロック・リー戦。こちらもアクションの大半を松本氏が担当。ただ#30と異なるのは背景が3D*2であること。密閉された試験場内で静止した我愛羅に対して、動き回るリーをカメラで追うのに適したアプローチ。通常の背景で同じ動きを描こうとすれば、構図に合わせた形状変化の難易度が高まる。今でこそ当たり前の3D背景も当時は黎明期であり、まだ質感もキャラのセルに馴染み切れていないものであるが、この実験的要素の積み重ねが今のアニメに繋がっていることを考えると感慨深さも感じられる。
#71『古今無双!『火影』というレベルの戦い』
木ノ葉崩し編の初代火影&二代目火影対三代目火影戦。#30同様に松本氏と若林氏が大半のアクションを担当。流れるような体術のみならず、水や炎、煙、瓦礫など様々な種類のエフェクトを堪能できる。非常に作画カロリーが高い話数ながら、原画は前述の2人に井上敦子氏を加えたたった3人なのも驚き。原作から戦闘描写がかなり追加されており、水遁によってできた水上戦闘もその一つ。後の若林氏の回に繋がる要素。火影同士の戦いに目を取られがちだが、冒頭のサスケのアクションも見所。各所でネタ扱いにされBORUTOでもオマージュされた「水の無い所でこのレベルの水遁を発動出来るなんて!」もこの回が元。結界外で観客・解説役と化した暗部の姿に和む。
#133『涙の咆哮!オマエはオレの友達だ』
サスケ奪還編のサスケ対ナルト戦。原作第一部におけるクライマックスであり、言わずと知れた伝説の回。例によって原作から大幅に追加された戦闘描写の大半を松本氏が担当。その戦闘描写の内、水上戦闘自体は#71でもあったが、今回は規模が大きい上に波打っているため、シンプルな見た目以上に容易く描けるシーンではないことが窺える。本話数ではナルトの影分身の使い方が見所の一つであり、次々と捌くサスケの体術シーンはもちろんのこと、さながらミサイルのように特攻させたり、梯子上に繋げて相手を投げる他、龍火の術の導火線にするアイデアは見事。後の話数でセルフオマージュとして使われる描写もある。また、これまでと異なり外野のキャラが不在のため、アクションのテンポが落ちないのがポイント。因みに本話数の松本氏の原画は某アニメ雑誌に掲載されているので、持っている人は大切に。
最後に
ということで、第一弾はこんな感じで。疾風伝はまた次の機会に。
未完結の原作有り長期アニメにとって避けられない問題である原作に追いつかないための尺稼ぎが本作品にも漏れなくあることから、正直なところ無理してまでアニメ全話を観る必要はないと思っています。作画回として挙げた回は単純に映像のみが良い訳でなく、演出面からも原作からより作品の魅力を増した工夫がされているので、原作読者にも観て欲しいところ。
それにしても2000年代に放送された本作品のスタッフリストを改めて見てみると、現行作品と比較して絵コンテ・演出・作画監督の人数の少なさに驚く反面、話数によっては画も緩めな印象。ただ、原作者の岸本先生はキャラデザを務める西尾鉄也*3氏のファンであり、原作時点である程度アニメ化を見据えた作りをされていることもあって、線を少なく動きを重視したアニメーションは本作品における最適解なのではないかなと。
今回はこんなところで、それではまた。