あの月を飼う日まで

アニメ×邦楽ロックの感想ブログ、たまに備忘録

話数単位で選ぶ、2021年TVアニメ10選

あけましておめでとうございます。
2022年も本ブログをよろしくお願いします。

さて、公開遅れにより集計対象からは外れることになりますが、2020年に引き続き、2021年も本企画に参加させていただきます。

対象の話数は、自分が2021年に視聴済み・視聴中のTVアニメ計26作品から、以下のルールに則って選出しました。

■「話数単位で選ぶ、2021年TVアニメ10選」ルール
・2021年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。
・集計対象は2021年中に公開されたものとします。


それではどうぞ。
※掲載は作品名の五十音順、スタッフ名は敬称略含む
 一部本編のネタバレが含まれます

 

 

話数単位で選ぶ、2021年TVアニメ10選

 

王様ランキング #7『王子の弟子入り』

 

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©十日草輔・KADOKAWA刊/アニメ「王様ランキング」製作委員会

脚本:岸本卓 絵コンテ・演出:御所園翔太 総作画監督:野崎あつこ 作画監督:阿部愛由美、御所園翔太、野崎あつこ、野田猛、中田久美子、万怡、島袋奈津希    

2020年度『このマンガがすごい!』にも選出されたマンガが原作。ボッジとダイダが新たな力を得るターニングポイントと呼べる内容。

冒頭1カット目から広角の構図により不穏さが煽られ、「この回はこれまでとは一味違うぞ」と予感させてくれる。その後も、メリハリのある寄りと引きの構図から、画面ブレのカメラワークや全影のキャラなど、セリフには出さずともキャラの心情が伝わる画面作りが終始続く。

また、瓢箪のような恰好をしたデスパーのクネクネした動きのコミカルさも目立つ。口調などと併せて如何にもやりそうな動作を見られるのが面白い。
本話数で描かれているイベントは少なく、食事や掃除といったルーティンワークの日常描写を省略せずに描いているのは2クールならではのテンポ感(ボッジの修行を直接映せない分の尺確保の意味合いもあると思うが)。過程を目にするとそれだけ過ごした時間に対する説得力が高まる。

昨今の深夜アニメでは珍しい線の少ないキャラデザインによるキャラの伸縮性のある動きや、体格差を意識したアイレベルのレイアウトやカメラワークが目を引く本作。御所園氏も参加される第2クール目が楽しみである。

 

小林さんちのメイドラゴンS #12『生生流転(でも立ち止まるのもありですかね)』

 

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クール教信者双葉社/ドラゴン生活向上委員会

脚本:山田由香 絵コンテ:山村卓也、石原立也 演出:石原立也 作画監督:角田有希

久しぶりの京都アニメーション新作。人間とドラゴンの関わり方により焦点を当てたシリーズ第2期の本作からは最終話を選出。

タイトルの"生生流転"とは、「すべての物は絶えず生まれては変化し、移り変わっていく」という意味。その言葉通り、冒頭から回る(廻る)ことを強調するように、納豆やみそ汁を混ぜる動作、金魚の泳ぎ方、綿あめ作り、桜といった円や繰り返しをイメージさせる光景が映される。
生まれながら持った特性。根本は変えられなくとも他人(他種)との関わりの中で、見方は変えることができる。ときには「こうあるべき」と周りから押し付けられることもあるだろう。ありのままを受け入れてくれた小林を選んだトールは間違っていなかった。

映像面ではAパート終盤、トールが告白後に口を押さえながら向きを変える動作が目に焼き付く。こういう京アニらしい仕草につい惹かれてしまう。夏祭りらしく暖色の灯りで照らされた表情はよりノスタルジックに映る。

人間とドラゴン、通常であれば交わるはずのない存在。ここまで関係を築けたのは相手の価値観を尊重しつつ、素で対等に接したからこそ。ギャグ描写が目立つ本作だが、第2期はそんな笑い合える当たり前の平穏を掛け替えのないものと思わせるものだった。

 

 

呪術廻戦 #24『共犯』

 

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©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会

脚本:瀬古浩司 絵コンテ・演出:朴性厚 作画監督:髙田陽介、赤井方尚、坂本ひろみ、井手上義英、山崎杏理、崎口さおり、矢島陽介、丹羽弘美

週刊少年ジャンプ連載中の人気作が原作。公開されたばかりの劇場版の興行収入も好調だとか。

御所園氏の初絵コンテ・演出回の#17と迷いましたが最終話を選出。原画には最終話らしく田中宏紀氏や渡邊啓一郎氏、藤本航己氏、吉原達矢氏などこれまで印象的なシーンを描いてきた方の名前も。道路という決して広くはないフィールドながら、壁や傾斜を利用した見応えのあるアクションを楽しめる。

本話数の見所はなんと言ってもロックバンドcoldrainMasato(Vo.)をボーカルに起用した挿入歌『REMEMBER』と映像のリンク。ボーカル有りの挿入歌といえば、真っ先に鷲巣詩郎氏や澤野弘之氏をイメージすると思うが、あくまで映像を盛り上げるためのBGMとしての意味合いが強い。対して本話数は、音楽と映像が同じレイヤ、さながらOPのように曲調の変化に合わせた暗転といった映像の変化が見られる。これが意外とないアプローチで、アニメの新たな形を目の当たりにしたといえる回。

ラストシーンでのモブキャラの表情も個性的。間接的でも守ることができた一般市民から注目を浴びる3人の様子が微笑ましい。結果的に初めて殺人を犯してしまった激闘の末、例え束の間であっても日常を過ごせるのは救いなのか否か。

www.youtube.com

 

Sonny Boy #11『少年と海』

 

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©Sonny Boy committee

脚本:夏目真悟 絵コンテ・作画監督:久貝典史 演出:大野仁愛

冒頭から希の葬式を描く衝撃的な幕開け。それなのにどこか晴れやかさもあるのは、極力黒を使わない画面の色使いとザ・なつやすみバンドの挿入歌『Lightship』のおかげだろう。これまでの話数同様、過去の夏目監督作品でもあったアニメで名前を見掛けることがほぼないアーティストとの邂逅。ファンファーレのような管楽器の音色は新たな旅立ちを祝うようでもある。世界に不条理は付き物でときには別れもある。でも立ち止まってはいられない。示された光の方へ飛び立つ。

僕は本当は寂しいけれど

君がくれた言葉は

消えずに光の中で

本話数は会話が中心であるが、キャラクターデザインを務めた久貝氏の単独作監により統一性がありつつ、動きが少なくとも十分に魅せられる構図・レイアウトの画面により退屈さは全くない。

大野氏はTV作品の本編では初演出。飛行機に造形の深い氏に相応しく、劇中には飛行機やロケットも登場し、ロケットに関しては資料として実際に模型を作成したとのこと。ディテールへの拘りが垣間見える。

特に印象的だったのはラストカット。ED曲である銀杏BOYZ少年少女』をバックに、長良が顔を上げきる前にスタッフロールへ繋げるのが見事。元々EDには映像が無い本作だが、それはこのときのためだったと思ってしまうくらいに嵌まっている。映画のような強いドラマ性が感じられた。俯きがちだった長良の迷いのない表情からは、長い漂流を経て成長した様子が窺える。この後の最終話共々、ここまで観続けてたことによる感慨深さのある回。泣いた。

 

 

SSSS.DYNAZENON #10『思い残した記憶って、なに?』

 

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©円谷プロ ©2021 TRIGGER・雨宮哲/「DYNAZENON」製作委員会

脚本:長谷川圭一 絵コンテ・作画監督・メカ作画監督:五十嵐海 演出:佐竹秀幸 総作画監督:坂本勝

前作『SSSS.GRIDMAN』#9にて絵コンテ・演出を手掛けた五十嵐氏の待ちに待った絵コンテ・作監回。今回も怪獣の能力によって、キャラが現実から隔絶した心象世界に飛ばされる内容。ただ、主人公の蓬が能動的に他の仲間を迎えに行く展開や、他キャラも過去との決別と描かれるものは大きく異なる。

静けさの中、次々と目の前から姿を消していくキャラ達。環境音を取り入れる本作だからこそ、その実在感から唐突さや不気味さがより強調される。また、五十嵐氏により普段の回より、ときにはコミカルさ、ときには壮絶さがある豊かな表情付けもポイント。そんな振り幅のある絵柄の違いを許容できる土台が本作にはあるのが心強い。

個人的な作画面の見所は、蓬が暗闇を走り夢芽と合流するまでを描いた菅野一期氏の担当パート。エッジが効いた絵柄による躍動感のある動きやギリギリまで表情を隠すキャラの見せ方がエモーショナル。前述の『SSSS.GRIDMAN』#9では、似た立ち位置のシーンを五十嵐氏が原画を担当したことに対して、今回は似た作画スタイルの若手である菅野氏が担当したことが、まるでリレーのような繋がりを感じられる。

夢芽の持つ知恵の輪。ふとした瞬間に解けたそれは姉の死の理由は分からずとも蟠りはなくなった証。そして、再び元の形に戻す。想いを繋ぎ止めるために。

 

 

トロピカル〜ジュ!プリキュア #29『甦る伝説!プリキュアおめかしアップ!』

 

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©ABC-A 東映アニメーション

脚本:横谷昌宏    絵コンテ・演出:田中裕太 作画監督:森佳祐

森氏の初作画監督回。絵コンテ・演出は、シリーズお馴染みの田中氏。原画には、温泉中也氏や土上いつき氏、はなぶし(渡邊巧大)氏など横の繋がりあったり過去シリーズで活躍した面子が集結。

暗所で月や照明を光源としたコントラストの効いたライティング、前後関係や体格差の分かるレイアウト・構図が印象的。また、アイテムの手鏡の他、水といった反射を活かしたキャラの心の内を覗くような視覚的に見入るシーンの数々。

プリキュアらしく体術中心のアクションも見所。巨大な敵キャラを足場にした縦横無尽、かつ柔軟性のあるポージングの動き、背景動画は観ているだけで楽しくなる。敵キャラは水を基にした体なだけに、その流体的な動きが森氏の作画スタイルと溶け込んでいる。

普段は観ない作品であっても、つい観たくなるようなフックのあった回。くるるんの誤射シーンはつい笑ってしまった。

 

BORUTO-ボルト- -NARUTO NEXT GENERATIONS- #189『共鳴』

 

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©岸本斉史 スコット / 集英社テレビ東京ぴえろ

脚本・絵コンテ・演出:・・ キャラクターデザイン・作画監督:夘野一郎

個人的な2021年No.1、本作では#65と並ぶ作画回。アニメーターの個性が前面に出た所謂お祭り回とは逆に洗練された統一的な美しさ。脚本・絵コンテ・演出の兼任、原作の絵柄に寄せた本話数のためだけのキャラクターデザインなど体制からも特別感のある作り。

現200話を超す長期アニメにおいて、こうした作画回を観られたのはいち作品ファンとして嬉しい限り。今後、年に一度でも同様のアプローチの回があることを心待ちにしてます。

 

reme-aniro9.hatenablog.com

 

 

無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜 #17『再会』

 

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©理不尽な孫の手/MFブックス/「無職転生」製作委員会

脚本:中本宗応 絵コンテ:長井龍雪 演出:髙嶋宏之 総作画監督:齊藤佳子 作画監督尾西真成人、髙嶋宏之、塚本歩、野田猛、萩尾圭太、吉野彰敏

2021年を代表する作画アニメともいえるだろう本作からは、#11や#21のようなアクション回ではなく心揺さぶられた本話数を選出。

前話数でようやく再会を果たしたと思いきや、これまでの険しい旅路を否定されるような現実を父パウロから突き付けられたルーデウス。不器用な2人がそれぞれ己と向き合い、本来の再会を果たすまでが丁寧に描かれる。

"面"・"顔"が本話数のキーワードでもあることからか、目線に着目したような表情付けやレイアウトに思わず目を引く。口から出る言葉と内に秘める想いのズレ。目線を切るレイアウトや引きの構図で、ルーデウスパウロ、2人の間にきまずく流れる時間を淡々と映す。主人公の過去回想はまさしく長井氏が監督を務めた作品の画面のような感傷的な空気感。そして、訪れた再会で秘めた感情を吐露する様子に思わず涙。

旅立ちのラストシーンも印象的。担当したのは須川康太氏。息子の姿を見届け、一度眼を閉じてから己の向かう先を見つめる様子からは、決意を新たにしたパウロの迷いの無さが見て取れる。成長した息子を信頼し、己の道へと歩み始める。

 

 

ワンダーエッグ・プライオリティ #3『裸のナイフ』

 

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©WEP PROJECT

脚本:野島伸司 絵コンテ・演出:米森雄紀 作画監督:久武伊織、けろりら

米森氏は初絵コンテ・演出、久武氏とけろりら氏は初作画監督。メインキャラの一人である川井リカの初登場回。一見、明るく自由奔放な彼女の繊細な内側に触れる。窓を利用したフレーム内フレームやプロップ(小物)、フィールドを活かした演出。同じ場にいるからこそ、立ち振る舞いの違いが見えてくる。戦闘においても、リカが武器を飛び道具としても扱うのが意外性があり面白い。

作画的にも全編に渡って見所が多いが、特に山本健氏が手掛けた波打ち際から始まる冒頭シーンや、新人の山崎晴美氏が手掛けた屋上からジャンプしてからのアクションに注目。終盤、屋上へ駆け上がる行為が作中のテンションと噛み合っており、それを良作画で描かれたとなれば、こちらも自ずとテンションが上がってしまうもの。

本話数では、好意を抱く人物を想い、自身を犠牲にするような熱狂的なファンが登場。現実でも一時期社会問題となった事例に切り込む内容。本作では、以降の話数においても問題に対して明確な答えは出さず、あくまで最終的には視聴者に判断を委ねる形であった。簡単には理解できずとも、可愛らしいキャラクターデザインを入口に、考えるきっかけを与えた本作の存在は貴重なものだったのではないだろうか。

自身を傷つけてきた存在である刃を再び振りかざす。今度は大切な存在を取り戻すために。

 

 

ONE PIECE #982『カイドウの切り札 飛び六砲登場』

 

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©尾田栄一郎集英社・フジテレビ・東映アニメーション

脚本:山崎亮 演出:石谷恵 総作画監督:市川慶一、松田翠 作画監督:涂泳策、斉藤圭太、北崎正浩

ワノ国編へ突入以降、画面に関する話題性がグンと上がった累計1000話突破の長期シリーズからは本話数を選出。演出は同じく2021年放送で反響の大きかった#957でも演出を務めた石谷氏。

広大な屋敷のある鬼ヶ島。襖を境に何重にも奥行きにある建物の構造を活かした演出が度々映される。同じ建物に存在する実在感、百獣海賊団の規模の大きさが伝わる。

その他、躍動感のあるアクションや引きの長回し1カットなど映像面で見所が多い本話数。その中でも一際目立っているのが、中盤の金色神楽シーン。大掛かりな宴の煌びやかさを撮影処理が存分に演出。監修は劇場版『ONE PIECE STAMPEDE』などで撮影監督も務めた和田尚之氏。芝居作画も抜かりない他、モブの群衆も作画で描かれるなど高カロリー。劇場版でも遜色の無い画面を楽しめるスペシャルな回。

本話数以降も、短いスパンで作画・演出・撮影面で見所のある回が放送。長期作品特有の原作に追いつかないよう尺伸ばし描写は時折あるものの、ようやく作品の知名度・人気に見合う画面になってきたのではないだろうか。今後のエピソードも期待。

 

惜しくも10選から外れてしまった話数

 

上記に挙げた作品以外で、惜しくも10選から外れてしまった話数は以下の通り。

スーパーカブ #1『ないないの女の子』
ゾンビランドサガ #11『たとえば君がいるだけで SAGA』
デジモンアドベンチャー: #54『さすらいの戦鬼リベリモン』
ホリミヤ #7『君がいて、僕がいて。』
不滅のあなたへ #20『残響』
・遊☆戯☆王SEVENS #77『蘇るグルグル』

 

最後に

 

2021年は、今回挙げた『Sonny Boy』や『ワンダーエッグ・プライオリティ』など、良作画でありながら内容面や制作体制面では実験的なアプローチの作品を複数観られたのがポイント。また、自分が好きな音楽との融合もあったのが大きいなと。
映像面のトピックスとしては、年々撮影処理の重要度が高くなっているように思えます。視聴者側からは原画よりもさらに担当者が把握し辛いセクションではありますが、スタッフによる素材公開も増えてきているので注目していきたいですね。
2022年もどんな作品と出会えるか楽しみです。

それはさておき、今回は時間が足らず企画の開催期間に間に合わなくなる大失態。次回は何とか間に合わせたいところ...。

今回はこんなところで、それではまた。