話数単位で選ぶ、2022年TVアニメ10選
早いもので2022年も残りわずか。今回は毎年恒例こちらの企画です。
集計は昨年に引き続きaninadoさん(https://aninado.com/archives/2022/12/02/940/)です。ありがとうございます。
対象の話数は、自分が2022年に視聴済み・視聴中のTVアニメ計18作品から、以下のルールに則って選出しました。
■「話数単位で選ぶ、2022年TVアニメ10選」ルール
・2022年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。
・集計対象は2022年中に公開されたものとします。
それでは、どうぞ。
※掲載は作品名の五十音順、スタッフ名は敬称略含む
一部本編のネタバレが含まれます
話数単位で選ぶ、2022年TVアニメ10選
王様ランキング #21『王の剣』
©十日草輔・KADOKAWA刊/アニメ「王様ランキング」製作委員会
脚本:岸本卓 絵コンテ・演出:御所園翔太 演出補佐:田中洋之 総作画監督:野崎あつこ 作画監督:金採恩、荒尾英幸、山本祐子、鴨居知世、野田猛、島袋奈津希、野崎あつこ、御所園翔太、オ スミン、河内佑、土上いつき、桝田浩史 原画作画監督:斎藤美香、久慈陽子
物語終盤のピークに当たるボッジ対ダイダ(ボッス)の血縁対決。目の前に立ちはだかる高すぎる壁。それぞれが譲れないもののために武器を手に取る。
御所園氏の絵コンテ・演出によるパースの効いた広角の構図が、ときにアクションの躍動感をときに感情の不安定さを強調させる。作画カロリーの高い背動や細かい破片、エフェクトなども惜しみなく使われ、アニメーションの面白味が詰まっている。
それでいてキャラの心情に移入できるような見せ方も欠かせない。四天王が成長したボッジの姿に何を想っているのか、ボッスの中に渦巻く複雑な感情は何か。キャラの目線を意識したレイアウトや細やかな表情変化、長尺で映すカット割りなどで映し出す。
ドラマとアクション、それら両面から作品の魅力を引き出した回。
明日ちゃんのセーラー服 #7『聴かせてください』
©博/集英社・「明日ちゃんのセーラー服」製作委員会
脚本:山崎莉乃 絵コンテ・演出:Moaang 作画監督:川上大志
朝から夜の色味、建物の構造を活かした構図、繊細な芝居作画、心揺れ動く背動。今回が初とは思えないMoaang氏の演出が細部まで行き渡った回。
音楽は好きだがギターを弾けない蛇森。咄嗟の見栄がきっかけで訪れた弾き語りの披露。理由をつけて"インテリア"と化していたアコースティックギターで手に音を鳴らす。
本話数では、3人の日々の積み重ねが丁寧に着実に描かれる。並行的に進む日々はときに交わっていき刺激し合う。昨日はできなかったことが今日はできるように。積み重ねによる変化を同ポジションで比較的に見せるのが特徴的。
そして、披露されたスピッツ『チェリー』のカバー。その精一杯を真正面に受け止めた小路。それまで凝った構図だったからこそ、真正面で拍手する姿は説得力に満ちていた。
その着せ替え人形は恋をする #8『逆光、オススメです』
©福田晋一/SQUARE ENIX·「着せ恋」製作委員会
脚本:冨田頼子 絵コンテ・演出:川上雄介 総作画監督:中村真由美 作画監督:小林恵祐
光を背に好きなものへ想いを馳せる。どんより曇り空のAパートから青く晴れ渡るBパートへ、コントラストが効いた回。
絵コンテ・演出は初の川上氏、作監は単独では約8年振りの小林氏とフレッシュ、かつ洗練された画面に。これまでの話数では部分的にあったリアル寄りの見せ方が高純度で隅々へ。枚数多めな芝居作画は通常であれば浮きかねないが、それが全編にあり尚且つ演出面で強度が高められている。ギャグ描写も波の音を使って小気味よく見せるなど、その場にあるものを活用。
ふと振り返ったときに目に映った景色。普段はレイヤーとして撮られる側の海夢が自然とシャッターを切る。逆光に照らされる彼の姿は紛れもなく奇麗だった。
チェンソーマン #8『銃声』
©藤本タツキ/集英社・MAPPA
脚本:瀬古浩司 絵コンテ:御所園翔太 演出:御所園翔太、佐藤威 総作画監督:山﨑爽太、杉山和隆、駿 作画監督:新沼拓也、野田友美、伊藤公崇、中山智代
前述の王様ランキングと同様、御所園氏の担当回。画面の特徴はそのままに、さらに音の使い方が冴え渡っている。環境音や和やかな劇伴で彩られる何気ない日常を遮る銃声。ラストシーンでは、姫野の死という受け入れがたい事実を突きつけられたアキの荒い息遣いのみを耳へ。
シーン別で取り上げたいのは、サプライズ的に参加した森久司氏が担当の「コン」。突如として現れ空間を歪めるような見せ方が氏のスタイルとマッチしていた。また、終盤、ヘビの悪魔に幽霊の悪魔が飲まれ頭部だけ残すカットはアニメオリジナル描写で目に残る。
本作は枚数を掛けた作画、淡白な音楽、生っぽい声優の演技と実写映画のようなアプローチが全話に掛けて見られた作品だったが、特に本話数がその作風に嵌っていた印象を受けた。
コンテなどやってます。
— 🥖 (@studio_gosso) 2022年11月29日
みんなで頑張りました。よろしくお願いします! https://t.co/yjLdOa1xOM
BLEACH 千年血戦篇 #13『THE BLADE IS ME』
©久保帯人/集英社・テレビ東京・dentsu・ぴえろ
脚本:平松正樹 絵コンテ:田口智久 演出:田口智久、サトウ光敏、小高義規 総作画監督:高柳久美子 作画監督:CindyH.Yamauchi
約10年振りにアニメ化となり話題となったファン待望の本作。分割の計4クールの内、第1クールの最終話を選出。
制作会社こそ同じだがキャラクターデザインや音楽など一部を除き、田口監督をはじめとした制作スタッフはほぼ一新。画面は3DCGと撮影処理を駆使した現代らしいものに。物語は話数が決まっていることで、中弛みなくテンポ良く進んでいく。
本話数ではこれまで謎に包まれていた斬月の正体に迫る。事実を突きつけられた一護の悲しみで雨が降り沈む世界。真の斬魄刀を目の前にして流れるは、前シーズンでも使われていた本作のメインテーマ『Number One』のアレンジバージョン。これまで共に戦ってきた道筋をなぞる様に、回想映像と共にフラッシュバックする。原点に戻りまた新たな姿へ。
重厚な雨、炎や灯りの照り返しが撮影処理で鮮明に彩られる。原作にはないその色が物語に溶け込んでいく。田口氏が監督に選ばれたのはこの回のためにあったのかもしれない。そう思えた回。涙なしには観られなかった。
ぼっち・ざ・ろっく! #8『ぼっち・ざ・ろっく』
©はまじあき/芳文社・アニプレックス
脚本:吉田恵里香 絵コンテ:斎藤圭一郎 演出:瀬尾健 作画監督:けろりら、Franziska van Wulfen、TOMATO
鰻登りで話題沸騰となった本作。満を持してのアジカンカバーもあった最終話と迷いましたが、こちらを選出。サブタイトルが唯一アジカンの楽曲由来ではないセルフタイトル。
結束バンドの初ライブでの窮地に歪んだ音を響かせる、ひとりが真のギターヒーローとなる瞬間。台風が去り、目の前に広がる星空。虹夏が心に仕舞っていた夢に触れ、新たな物語の始まりを告げる。
#5と異なり本番であるため、結束バンドのライブハウスでの本格的なライブ描写としてはこの回が唯一である。演奏のズレ表現、焚かれたスモークに反射する照明、手元を省略しない演奏作画。#5とも差別化されたライブシーン。照明で色鮮やかに照らされる中、強くぼかして焦点が定まらない画面は、ひとりの底知れなさが強調させる。ライブ描写のリアリティとキャラクター性が溶け合う。数あるアニメのライブシーンでも、ここまでのものは目にしたことがなかった。
本作は自分にとっての2022年ベストアニメ。最高でした、ありがとう。
メイドインアビス 烈日の黄金郷 #10『拾うものすべて』
©つくしあきひと・竹書房/メイドインアビス「烈日の黄金郷」製作委員会
脚本:倉田英之 絵コンテ・演出:小出卓史 作画監督:阿部島瑠珠、崎本さゆり、谷紫織、黒田結花
可愛らしいデザインのキャラが容赦のない過酷な奈落に飛び込むギャップで話題の本シリーズ。第2期から本話数を選出。
絵コンテ・演出はOPもディレクションした小出氏。遠く離れた時間と空間をマッチカット*1によって、シームレスに繋いでいく。音の使い方も印象的で、ファプタによる殺戮をまずは耳から暗に伝えていく。じわりとレグに寄るカメラのズームとも親和性が高い。アクション描写では、素早いファプタを表現するためにカメラを引いて駆け回らせる。
そして、物語のピークを迎えたところでラストの暗転と止む劇伴。演出力が光る回だった。
おそめの宣伝ですがアビス2期#10で演出してました。今回もたくさんの方々に助けていただき、、、ありがとうございました.......🙏🙏
— 小出卓史 (@koidetakushi) 2022年9月8日
よろしくお願いします!! pic.twitter.com/R0kGyXRhz9
モブサイコ100 Ⅲ #8『通信中② ~未知との遭遇~』
脚本:立川譲 絵コンテ・演出・作画監督:伍柏諭
前クールの#5において、パラレルワールドでの最上との熾烈な戦いを描いた伍柏諭氏の担当回。そのときとは全く毛色が異なるエピソードで、氏の新たな一面を覗かせる。
山の傾斜を活かしたレイアウトに緩めのキャラ作画、ロングショットでは潔く表情を省略。それでいてキャラの心情が伝わるポージングと芝居作画。自然と画面に引き込まれていく。原作よりもさらにドラマ性の強いものとなっている。
そして、宇宙人との別れを告げ終わり…と思わせてからの特殊ED。原作では犬川のモノローグのみだけであったシーンが鮮烈に描かれる。背動も存分に使われ本編とは文字通り世界が異なる画面に。これが観たかったんだろうと言わんばかり。最後まで余すことなく楽しめた回。
ヤマノススメ Next Summit #7 Bパート『クラスメイトと山登り!』
©しろ/アース・スター エンターテイメント/『ヤマノススメ Next Summit』製作委員会
脚本・絵コンテ・演出・作画監督:ちな 総作画監督:松尾祐輔
前クール#10でも絵コンテ・演出を手掛けたちな氏の担当回。さらに今回はアニメーターとしては珍しい初の脚本も手掛けた。内容はその話数と同様、あおいとひなたにクラスメイトの関係性を描いたもの。地続きなのは冒頭1カット目に映る写真からも明らか。そこから最後のカットとも繋がりを持たせ、ひなたの姿も加わった。新たな思い出の更新。
かつて登山初心者だった自分の姿を想起させながら、高尾山登山に思わぬ苦戦をするクラスメイトの手を取る。これまでの登山を経たあおいの成長が描かれる。あおいとかすみのが坂を上るシーンの原画を担当したのは森匡三*2氏。上半身や足元のみといった一部を映しても、疲れ具合や歩幅の違いが分かる歩き方の描き分けが見事。
同話数のAパートもそうだが、年末年始の山で混む群衆を作画で描ききっているのがポイント。その表情も個性豊かで実在感がある。とりわけ目を引くのがニーヌ・マッケンジー氏のパート*3。氏の絵柄全開なのは本作ならではだろう。カメラの焦点がモブキャラに当たるカットすらある。メインキャラのみではない、山に登るキャラ一人ひとりに物語があるのだ。
ヤマノススメ7話Bパートの脚本絵コンテ演出作画監督やりました。Aパートの斎藤圭一郎回と合わせて、よろしければ、是非。 pic.twitter.com/kmSXdkPQyT
— チナ•スィ (@kg_ui) 2022年11月15日
ONE PIECE #1015『麦わらのルフィ 海賊王になる男』
©尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション
脚本:山崎亮 演出:石谷恵 作画監督:森佳祐、伊藤公崇、小島崇史、山本拓美
記念すべき原作#1000に相当する重要エピソード。それを担当するのは、#982でも鮮烈な印象を与えた石谷氏。今年も長期作品ながら短いスパンで良作画・演出を目にする本作だが、その中でも一際目立つのが本話数。
ルフィの夢が語られるシーンは淡い色合いでノスタルジックに。エースとの楽しい一時は炎と人の温もりを感じさせる撮影処理に。だが手から離れた喪失感はひどく重苦しい。作画と色彩、撮影処理の相乗効果でこれ以上ないものに仕上がっている。構図もカメラが寄るところは寄り、離すところは離す。また、敢えて表情を隠しここぞという場面で見せる。キャラが何を感じ、視聴者に何を見せたいのかがはっきりとしたメリハリが効いている。
昨年度に挙げた10選である#982を越えた本話数。徐々に完結へ向けて動いている本作で、この先に一体どんな景色が見られるのか楽しみでしかない。
アニワン1015話に参加してくださった皆様、本当にお疲れ様でした🙇♀️
— 石谷牛乳 (@ishigyunyu) 2022年4月24日
そしてありがとうございました…!!
誰が欠けてもこの完成形には辿り着けないというのが、アニメーション作りの素晴らしいところだと今回強く強く思いました。
この後もすんごい話数が待ち受けていますよ!お楽しみに!#ONEPIECE
ONE PIECE 第1015話
— リミナ (@reme_yg) 2022年4月24日
演出:石谷恵
エースの灯した火が光源となり、期待に胸を膨らませるヤマトの動きと併せて上向きに心を照らす。
劇中の時間帯とキャラの能力を活かしたアニメオリジナル描写。#ONEPIECE pic.twitter.com/1fjTXU6Lt9
惜しくも10選から外れてしまった話数
Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ- #6『DIYって、どうでも・いいもの・やくにたつ!』
プリンセスコネクト!Re:Dive Season2 #4『駆け出しの名探偵 ~ミロワールに想いを寄せて~』
リコリス・リコイル #4『Nothing seek, nothing find』
最後に
振り返ると2022年はさらに作画・演出の優れた作品が多かった印象でした。特に秋クール至っては、TVアニメ放送開始以来といっても過言ではなかったのではないかなと。反面、感動が薄らぐような感覚が麻痺していくような贅沢な悩みもあったり。TVアニメの最高水準がこのまま上がっていくと一体どうなるのだろうか...。
また、前述の明日ちゃんのセーラー服やぼっち・ざ・ろっく!の他、チェンソーマンの毎話変わるEDにONE PIECE FILM REDでのウタへの楽曲提供と、自分の好きな邦楽ロックとアニメの距離感が近い年でもあったなと思います。自然と心惹かれるものがありました。
来年もまた心を動かしてくれる作品に出会えますように。
今回はこんなところで、それではまた来年。