あの月を飼う日まで

アニメ×邦楽ロックの感想ブログ、たまに備忘録

話数単位で選ぶ、2024年TVアニメ10選

今年もこの時期がやってまいりました。

集計は昨年に引き続きaninadoさん(https://aninado.com/archives/2024/12/07/1070/)です。ありがとうございます。

対象の話数は、自分が2024年に視聴済み・視聴中のTVアニメ作品から、以下のルールに則って選出しました。

■「話数単位で選ぶ、2024年TVアニメ10選」ルール
・2024年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。


それでは、どうぞ。

※掲載は作品名の五十音順、スタッフ名は敬称略含む
 一部本編のネタバレが含まれます

 

話数単位で選ぶ、2024年TVアニメ10選

 

ガールズバンドクライ #05『歌声よおこれ』

 

©東映アニメーション

脚本:花田十輝/絵コンテ:酒井和男/演出:朝倉舞彩/ライブパート絵コンテ・演出:三村厚史/リードアニメーター:小泉正行/作画監督山崎智

東映アニメーションが手掛けたオリジナル3DCGアニメーション作品。信念を曲げないバンドストーリーに、既存の3DCGアニメにない新しいルック(イラストルック)やフルコマながらリミテッドアニメーションに通じる動きの表現もあり、2024年で話題性の高かった本作からは本話数を選出。

かつて桃香が所属していたバンドであり、新ボーカルがかつて仁菜が絶交した元友達のヒナであるダイヤモンドダストとの邂逅とそれに伴うバンドメンバー内の衝突。そして、仁菜・桃香・すばるの3人でのライブハウス初ライブという序盤におけるターニングポイント回。居酒屋での一幕は現代的に非常識に映るが、現ダイヤモンドダストを目の前にして困惑する仁菜と脱退に対してまだ割り切れていない桃香の感情のぶつかり合いで一線を越えるパンチのある見せ方だった。バンドメンバーという運命共同体として、中立的な立場だったすばるにもウーロン茶をかけるオチも面白い。

『視界の隅 朽ちる音』が披露されるライブパートでは、スマホでステージを撮影する観客とリンクする手振れのカメラワークやピントの切り替わり、Fixなしで激しく繋がれていく映像はライブハウスの熱狂を伝える。また、アニメのバンド描写において制作の手間から省かれがちな楽器演奏の手元もばっちり映す。なおリアリティという点では、現実の300人キャパの小さめな会場で劇中のようなカメラワークは有観客では困難であるが、現実に即すると地味な映像になるのでそこはご愛敬。
劇中にはTOKYO DOME CITY HALLセルビアンナイトといった実在のライブ会場も登場し、普段バンドのライブによく足を運ぶ自分にも爪痕を残していった。
余談だが、先日のCOUNTDOWN JAPAN 24/25で観た生のトゲナシトゲアリのライブが最高でした。

 

 

葬送のフリーレン #26『魔法の高み』

 

©山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

脚本:鈴木智尋/絵コンテ:斎藤圭一郎、原科大樹、岩澤亨/演出:森大貴/総作画監督:長澤礼子/総作画監督補佐:藤中友里/作画監督:廣江啓輔、瀬口泉、新井博慧、八重樫優翼/アクション作画監督:岩澤亨

世のTVアニメでは分割放送が大半を占める中、連続2クールとは思えないほど高クオリティな本作。その2クール目からは一級魔法使い選抜第二次試験クライマックスの本話数を選出。本作のメインスタッフに加え、演出には『天国大魔境』(2023年)で監督を務めた森大貴氏が初参加。

OP明けから始まる激しいアクションの応酬。これまで本作のアクション描写は、昨今の情報量の多い高速のものではなく、何が起きているか視聴者が目で追いやすいものであった。しかし、本話数ではアクションディレクター岩澤亨氏の緻密な絵コンテの下、敢えてその高速アクションが国内外の実力派アニメーターにより描かれる。原作から大幅に追加されたアクション描写は、常人では何が起きているか分からない魔法の高み。

ドラマパートにも見所が多く、原作からよりドラマ性を高める工夫がされている。ゼンゼの回想シーンでは、ハサミの刃でゼンゼを挟む構図や、ユーベルのアオリ構図で机の上にハサミを這わせる芝居などにより、ハサミによる"切るイメージ"とユーベルの優位性を強調。さらに決着時の追加台詞もキャラクター性とマッチしており冴えている。

ゼンゼ「髪の手入れ?地獄だよ。考えたくもない」
ユーベル「切ったらいいのに。」

また、フリーレンの回想(フェルンとの会話)シーンでは、フリーレン視点のPOVとなり手の動きやフェルンの反応と連動することでリアリティのあるカメラワークとなり、より没入感を増している。
アクションもドラマも全く抜け目がない、まさしく高みに至る話数だった。

 

 

 

ダンダダン #07『優しい世界へ』

 

©龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員

脚本:瀬古浩司/絵コンテ・作画監督:榎本柊斗/演出:松永浩太郎/作画監督補佐:奥谷花奈 


少年ジャンプ+で連載中の同名漫画が原作。連載時から人気エピソードでもあるアクロバティックさらさら(以下、アクさら)の話数を選出。直近『きみの色』(2024年)をはじめとしたサイエンスSARU作品や『天国大魔境』(2023年)でも重要シーンを手掛けた榎本柊斗氏が主要スタッフとして参加。演出の松永浩太郎氏はかつて榎本氏が原画で参加していた『エガオノダイカ』(2019年)の制作進行を担当していた縁がある。

次回予告の時点でも話題となっていたが、冒頭数カットで伝わるのは所謂作画回・演出回の雰囲気。本作でも特に重いエピソードに合うよう、普段は画が緩めな作風ながら本話数ではややリアル寄りのキャラ作画にかっちりとした画面作りに。特にPOVやキャラの目線に近い位置に置かれたカメラ、Jカット*1などにより没入感が高い。アクさらという当初は敵であった相手に対してより感情移入しやすい。加えて、キャラの反応描写が細かく、その場でキャラが何を見て何を聞いているのか自然と伝わってくる臨場感と説得力。原作からの膨らませ方も巧く、アクションパートでの次第に鉄骨に絡まっていくアクさらの髪や、回想パートでの娘の歯など時間経過の描写もさりげない。雑に置かれたお札や天候の変化などよりシリアスに見せる工夫も随所に見られる。

インタビュー*2によると生前のアクさらがアパートの階段をPOVで降りるカットは山代風我監督の考案だが、それでも榎本氏の初絵コンテとは思えない完成度の高さ。2025年10月からは第2期が放送開始されるが、また観られることを待ち望んでいる。

 

 

逃げ上手の若君 #02『やさしいおじさん』

 

©松井優征集英社・逃げ上手の若君製作委員会

脚本:冨田頼子/絵コンテ・演出:川上雄介/作画監督:伊藤優希

週刊少年ジャンプで連載中の同名漫画が原作で、史実を元にした歴史物語。これまで『魔人探偵脳噛ネウロ』や『暗殺教室』を手掛けた原作者松井優征氏らしくエキセントリックな作風。序盤にして映像的にインパクトのあった本話数を選出。絵コンテ・演出は本作で副監督を務めた川上雄介氏。

『ぼっち・ざ・ろっく!』と同じく梅原翔太アニメーションプロデューサーの制作ラインの作品であり、既存のアニメに囚われない表現とそれを形にしてしまう馬力の高さが持ち味。多種多様なタッチ・ルックの映像が続き、初回から続く本作の自由度の高さを窺わせる。尚且つ本作ではギャグとシリアスの落差が激しいが、それぞれ原作から膨らませた表現や描写が取り入れられている。双六描写を桃鉄パロディに繋げる発想は頼重の未来視が現代的でイメージしやすい。宗繁の鬼のシルエット(イメージ)を煙越しに見せるのも自然。
同制作ラインでアクション描写があるのは、2021年の『ワンダーエッグ・プライオリティ』以来。舞台が月明りのみの夜の野外だが、キャラを視認しやすい色味に時折ロングショットを挟むことで各キャラの位置関係で混乱しない。背動で盛り上がりはピークに。

そして、原作ではアニメ#03の冒頭に当たるギャグ要素もあるシーンで本エピソードを締めるのだが、アニメでは新たに追加された邦時との蹴鞠のシーンで締める。邦時の最期に立ち会えなかった時行があの日見付けられなかった鞠を拾い上げる。前話数でもあった首と鞠のマッチカット*3は仇討ちの達成を強調すると共に、もう戻らない日常・天下を取るまで訪れない平穏をありありと示す。ただ、原作通りになぞるだけではないアニメの在り方。

 

 

響け!ユーフォニアム3 #08『なやめるオスティナート』

 

©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会2024

脚本:花田十輝/絵コンテ:以西芽衣/演出:宮城良/作画監督門脇未来

2015年に放送開始した本シリーズの最終章。原作から大胆なアレンジを加えた#12などと悩んだが、映像面で思わず唸ってしまった本話数を選出。部長となった久美子にとって3年生で最後であり、関西大会のオーディションを兼ねた夏合宿。部長の久美子と名門校からの転校生の真由、選ばれたのは...。

映像面では以西芽衣氏が絵コンテ・演出を手掛けた#03と同様、登場人物の手元や口元のアップでの所作、感情の高まりで細かく刻まれるカット割り、じわりと動くカメラワーク等が特徴的。画とリズムで登場人物の心情を言葉がなくとも浮き彫りにしていく。今でこそ他作品でも目にするようになった見せ方ではあるが、京都アニメーション作品で見られることに特別な感情を抱かずにいられない。同じユーフォニアムパートで、在校生で部長という立場の久美子と転校生であり優れた技術力を持つ真由の2人。本音と建前、個人と組織。心が揺れ動く中、実力で選ばれるからこその残酷さがある話数。

特に印象的だった演出は木に張った蜘蛛の巣を使ったもの。青空を目指して羽ばたこうとしたアゲハ蝶が眼前にある蜘蛛の巣に気付かず捕らえられる。演出に蜘蛛の巣を用いること自体は珍しくないが、久美子の「私は心の引っ掛かりを無視しようとしていた」の台詞と共に蜘蛛の巣から一度ピントをずらした後、オーディションの結果が告げられた結末でピントが合う。目を逸らした現実を突きつけられる見事な演出だった。今後の以西氏の仕事に注目したい。

 

ぷにるはかわいいスライム #07『Sweet Bitter Summer

 

©まえだくん/小学館/ぷにる製作委員会

脚本:池田臨太郎/絵コンテ・演出:ちな/Vコンテ:土上いつき/総作画監督:田中彩/作画監督:今岡律之

Web漫画サイトの週刊コロコロコミックに掲載の同名漫画を原作としたアニメ。数々の男児に癖を植え付けてるとか何とか。本作からはこれまでの話数単位でも選出しているちな氏の絵コンテ・演出回を選出。

夏という共通テーマの短編をまとめたエピソード。長い夏休みを想起させるように太陽やセミ、文字演出などの要素を反復させ合間に挟みつつ、コメディ作風に合うようテンポ良く進んでいく。奥行きのある構図で全身を使ったコミカルな芝居作画が楽しい。演出面でも電柱や壁にイメージを投影させたり、喫茶店ではサイフォン越しにキャラを映し、境界線と歪みを兼ねた演出がされるなどアイデアも豊富。また、同ちな氏の絵コンテ・演出回である『ヤマノススメ Next Summit』#07 Bパートと同様、モブキャラにも注目。台詞はなくともメインキャラの動向に対する何気ない反応でコメディ成分が増す。画面端で動く蟹。雲母先輩の流した涙でできた水溜まりに船を浮かべる子供。そして、そんな作画や演出が背景美術と相まって、自分もこんな少年時代の夏を過ごしたかもしれないというノスタルジックな気分に浸れる。

本話数では、絵コンテ・演出、総作監作監が各1人に原画が6人(2原なし)という令和のTVアニメとは思えない驚異的なクレジットも目を引く。クレジット上からは読み取れないが、ちな氏が全カットのレイアウトを切っているとのことで、昨今のアニメでは珍しい制作フローなのが窺える。近年はちな氏のイベント登壇の機会が増えているだけに、いつか制作フローの詳細がイベントやインタビューを通して明らかになって欲しいところ。

 

 

忘却バッテリー #11『俺は嘘つきだ』

 

©みかわ絵子/集英社KADOKAWAMAPPA

脚本:池田臨太郎/絵コンテ:徳丸昌大/演出:徳丸昌大、増田桃一郎/演出補佐:橘内諒太/総作画監督:朴旲烈、島袋奈津希/作画監督:徳丸昌大、井上修一小木曽伸吾、石塚理央、宮地聡子、中西優里香、陳品君、若狭賢史、三浦里菜、陳韋寧、飯田剛士、キムヒョナ、パクソジョン、林梦贇/作画監督補佐:永松一誠、林珠銀、齊田恵瑠、本田もえ、柴田志朗、藤田亜耶乃、五十嵐友美

少年ジャンプ+で連載中の同名漫画が原作。物語の終盤、主人公ら率いる小手指高校対氷河高校の試合の話数を選出。絵コンテ・演出(共同)を手掛けたのは、『はねバド』(2018年)や『Vivy -Fluorite Eye's Song-』(2022年)のアクションで注目された徳丸昌大氏。本作#01では千早の盗塁シーンの原画を担当していたが、本話数を担当することを見越してのことなのかもしれない。

要「一緒にやる?」

千早「やる!」


本話数では、千早とその周囲(特にかつてのチームメイトの巻田と現チームメイトの清峰や要)に焦点が当たる。千早の目の前に立ちはだかる壁のイメージ。壁だったのは相手ピッチャーの巻田ではなく、チームメンバーを信頼する自分自身の心。原作にはなかった要の問いかけに対する千早の本心を表す言葉で思わず涙腺が緩む。

映像面では、3DCGレイアウトを活用した立体的な構図が随所に見られ、アクション・芝居を問わずロングショットでもキャラが全身を使って細やかに動く。また、野球の打者交代や攻守交代、現在⇔過去とシーンや時間軸が切り替わる際には、アクションカットや画面手前に人や物を横切らせるトランジションを使用することで、テンションを途切れさせることなくシーンを繋いでいく。
本作はコメディ要素もある中で、シリアスな雰囲気を壊さないようにコントロールされており、冒頭と結末で千早の心象風景となるよう原作から改変することでまとまりのある話数になっていた。

 

 

僕のヒーローアカデミア #157『I AM HERE』

 

©堀越耕平集英社僕のヒーローアカデミア製作委員会

 

脚本:黒田洋介/絵コンテ:堀元宣/演出:大槻真之/作画監督馬越嘉彦、小田嶋瞳、森島範子、藤井奈美、上竹哲郎、長谷部敦志/エフェクト監督:柿田英樹

原作が今年8月に完結した本作(単行本最終巻も発売済み)。最終章に突入しているアニメ第7期からはオールマイト参戦に荼毘戦の決着と物語の盛り上がりを見せた本話数を選出。

原画には中村豊氏や杉田柊氏、上妻晋作氏らが本編に初参加の他、海外からやこれまで本シリーズを支えてきたアニメーターも参加し、本シーズンの中でも作画面で見応えがあった。戦いが過熱し、次第に満身創痍になっていく状態がタッチ線で表される。表情も鬼気迫るものに。個性の性質上、頻繁に登場する炎や爆発、煙といったエフェクトも細やかでシリアスな物語に溶け込む。オール・フォー・ワンを待ち構えるオールマイトも髪や服の立体的な靡きのリピートで、キャラ自身の動きは少なくとも堂々とした覚悟が伝わる。

そうした作画面に声優陣の熱演も掛け合わさっていく。累計150話越えの長期作品だからこそのキャラと一体になった熱量が確かにそこにあると感じさせられる。特に印象的だったのは荼毘決着後の轟家のシーン。普段は高圧的だったエンデヴァーが自らの過ちを悔い、負担を強いていた家族へ謝罪する。稲田徹氏のすすり泣く演技にリップシンクの作画が掛け合わさり、こちらも思わず涙が頬を伝う。
サブタイトル『I AM HERE』は元々オールマイトを指したものである*4が、アニメでは轟家のエピソードといち話数に合わさることで、「自分はここにいる」と自暴自棄気味に存在を示す燈矢や、その燈矢を孤独にさせず寄り添う家族の描写にも繋がる。
2025年に放送が決定している次の第8期でアニメも完結へ。恐らく第7期は劇場版と並行作業もあった中、最後はTVシリーズに注力しプルスウルトラして欲しいところ。

 

 

負けヒロインが多すぎる! #12『俺はひょっとして、最終話でヒロインの横にいるポッと出のモブキャラなのだろうか』

 

©雨森たきび/小学館/マケイン応援委員会

脚本:横谷昌宏/絵コンテ:須藤瑛仁/演出:須藤瑛仁、北村翔太郎/総作画監督川上哲也作画監督:齋藤悠、晶貴孝二、鈴木理彩、合田浩章、朱浩然、矢向宏志、大久保洸太郎、針場裕子、石川智美

ガガガ文庫での刊行中の同名ライトノベルが原作。恋愛モノにおけるメインヒロインではなく恋敗れる"負けヒロイン"がメインヒロインという斬新なラブコメ作品であり、EDでの各ヒロインによる懐かしい楽曲カバーや約10年振りにTVアニメでセル画が使用されたことでも話題を呼んだ。どの話数を選出するか迷ったが、最終話を選出。絵コンテと演出(共同)は、檸檬のED2の絵コンテ・演出を担当した須藤瑛仁氏。

最終話にして原作者の雨森たきび氏原案によるアニメオリジナルエピソード。最終話は物語上でキリの良いものとなるよう構成されるものだが、本作では11話で一旦締めた後にさながらOVAのような番外編が展開される。その内容が疑似デートであり、ラブコメ作品なら主人公とヒロインの恋愛的進展が期待されるところ、本作でそんなものはないと一種の信頼と安心。

馬剃『何でこの制服リボンが4つも付いてるのよー!』


本作を観た視聴者がまず突っ込んだだろう前述の馬剃の台詞や「浮気だよ!」を彷彿とさせる八奈見の「大丈夫だよ!」の天丼ギャグ、「マケイン」発言*5とメタ的な要素が登場する。また、これまでは比較的リアリティラインが高めの画面作りだったが、赤い光に照らされる室内や広角の構図、崩した表情の作画と遊び心がある。それも本話数が本筋から切り離された番外編という立ち位置だからだろう。
そしてED。OP『つよがるガール feat. もっさ(ネクライトーキー)』とこれまでの本編映像が流れる。ここまでは割とありがちだが、クレジットには本話数のみならずこれまでの本編やOPEDに関わったスタッフの名前も載る粋な計らい。こういう最終話もアリなんだなと思わせてくれる話数だった。

 

 

ONE PIECE FAN LETTER

 

©尾田栄一郎集英社・フジテレビ・東映アニメーション

監督:石谷恵/脚本:豊田百花/脚本協力:石谷恵、森佳祐/キャラクターデザイン:森佳祐/絵コンテ:石谷恵、森佳祐/演出:石谷恵、道端菜名実/作画監督:森佳祐、林祐己/メインアニメーター:柏熊信、齋藤浩登/作画監督補佐:FASTO、劉志光

今年10/20の放送25周年を記念した『ONE PIECE』のTVSPであり、原作は短編小説『ONE PIECE novel 麦わらストーリーズ』。TVSPだが『ONE PIECE』の放送枠ではあったため、今回選出に至った。メインスタッフはAdo『風のゆくえ』MVやエッグヘッド編のOPと同様、石谷氏と森佳祐氏のタッグ。さらに脚本の豊田百花氏はその2人と東映アニメーションの同期という間柄。

まず目を引かれるのは画面のルック。前述のエッグヘッドOPと同様にキャラの線が少なく影も控えめ、柔らかいフォルムに伸縮性のある動きでキャラが活き活きとしている。情報量を足していく昨今のアニメへのカウンター。それでいてどこか懐かさも。背景美術もそんなキャラが溶け込む、フリーハンドで描いたような均一さのない線と色合いの温もりがあるものに。物語上、本作で焦点が当たるのは名前も語られない一般人だが、悪魔の実の能力者をはじめとした海賊を前にすればあまりにも無力。まさしく"路傍の石"。容易く地形を変えてしまうような力を前に成す術がない様子を、キャラの表情や画面の色合い、間の取り方、音響などによってシリアスに伝える。全体的に映像の緩急の付け方が見事だった。ルフィらの表情を極力映さないことも徹底されている。尺に余裕がない中でのオムニバス方式だが、キャラの台詞や描写を被せることでシームレスに繋がる工夫も見られた。はじめはバラバラだったパズルのピースという個々の想いや行動の小さな断片が、次第に組み合わさり一つの形を成していく。観た人にとって宝物になるような素晴らしいアニメだった。

原作ありの人気作品で作り手の色が出ることは時に拒否反応を示される中、ここまで突き抜けた作品を観られたことがいちアニメファンとして嬉しい。それと同時に石谷氏が今後、細田守監督や新海誠監督に続くような大物監督になっていくのではないかと期待が膨らむばかり。
それと話は変わるが、『ONE PIECE』が2025年4月より深夜帯に放送枠変更される(恐らく長期放送ではなくなる)。元々、原作ストックがない中で絞り出すかのようにアニメオリジナル描写を追加して放送されていたが、半年の放送休止を経た放送時間帯の変更が良い方面に作用してくれることを願う。

 

 

惜しくも10選から外れてしまった話数

 

小市民シリーズ #02『おいしいココアの作り方』
ダンジョン飯 #11『炎竜1』
BLEACH 千年血戦篇-訣別譚- #12『FRIEND』
僕の心のヤバイやつ #18『karte18/山田は僕が好き』
無職転生 II 〜異世界行ったら本気だす〜 #22『親』

 

最後に



今年も劇場作品やMV・PV含めても豊作な年であった。
分割放送が当たり前になって久しい中、『葬送のフリーレン』や『ダンジョン飯』のように高水準な映像の連続2クールアニメが放送されたのも大きなトピックス。
原作モノに関しては、自分の評価軸として原作からアニメという異なる媒体に落とし込むに当たって、どのような工夫があったかがある。作風から逸脱せずに映像として見栄えが良くなったり何が起きているのか理解を促す工夫がされているとアニメで観た甲斐があると思えるし、今年選出した話数にもそれが当てはまる。
昨今のSNSを中心としたクリエイターに直接視聴者の声が届く時代。いちファンとしては、どうか臆せず枠に囚われず創作活動が続いて欲しいと願うばかり。

今年もありがとうございました。2025年もよろしくお願いします。
今回はこんなところで、それではまた。

*1:次シーンの音声を先行して流す編集手法のこと

*2:月刊ニュータイプhttps://note.com/newtype_magazine/n/nb9926757b030)より

*3:なお、#01は原作通りの描写

*4:原作第386話のサブタイトルであり、「私が来た」の英訳が「I AM HERE」

*5:八奈見曰く「マーケットでインフラの凄いとこ」の企業