あの月を飼う日まで

アニメ×邦楽ロックの感想ブログ、たまに備忘録

話数単位で選ぶ、2023年TVアニメ10選

今年もこの時期がやってまいりました。

集計は昨年に引き続きaninadoさん(https://aninado.com/archives/2023/12/10/1047/)です。ありがとうございます。

対象の話数は、自分が2023年に視聴済み・視聴中のTVアニメ作品から、以下のルールに則って選出しました。

■「話数単位で選ぶ、2023年TVアニメ10選」ルール
・2023年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。


それでは、どうぞ。

※掲載は作品名の五十音順、スタッフ名は敬称略含む
 一部本編のネタバレが含まれます

 

話数単位で選ぶ、2023年TVアニメ10選

 

アイドルマスター シンデレラガールズ U149 #04『羽が折れているのに飛んでいくもの、なに?』

 

 
©Bandai Namco Entertainment Inc. / PROJECT U149

脚本:村山沖/絵コンテ・演出:河原龍太/総作画監督:井川典恵/作画監督:野田猛

言わずと知れたアイドルマスターシリーズの内の本作からはこの話数を選出。

番組企画でバンジージャンプに挑戦することになった桃華。テレビカメラのレンズの先に求められる虚像、脚色されたお嬢様キャラを難なく演じる桃華とそれを目の当たりにして慌てふためくありすのコミカルな表情が楽しい。
順調に撮影が続けられるが突如、今までに感じたことのない緊張感は魚眼レンズによる歪みとして現れる。求められているものと自分らしさに揺らぐ中、新たな景色に飛び込んだ桃華は頼もしい表情に満ちていた。

蝉の鳴き声をはじめとした環境音とゆったりとしたテンポ感で夏を感じさせる。音に関しては風や足音などもキャラの感情にシンクロして効果的に使われている。物語に合わせたカット割りと演出で過剰さがなく見やすい作り。そして、持ち曲『無重力シャトル』をバックにバンジージャンプして揺られるカットは、激しく揺らぐ背景に靡く髪、顔に落ちる影の動きで重力を感じさせる。ピークとなる場面で強い画がくるのも、いち話数の中でコントロールされているように受け取れた。

 

王様ランキング 勇気の宝箱 #3 Bパート『ダイダと魔法』

 

 
©十日草輔・KADOKAWA刊/アニメ「王様ランキング 勇気の宝箱」製作委員会

脚本:河口友美/絵コンテ・演出・作画監督:野崎あつこ

第1期の本筋ストーリーでは描かれなかったエピソードを集めたオムニバス方式の第2期からは本話数を選出。

第1期からキャラクターデザイン・総作画監督として本シリーズを支えてきた野崎氏が初めて絵コンテ・演出を担当。微笑ましくもときに勇気ある幼き頃の兄弟の姿を柔軟な芝居作画で切り取っていく。こっそり城外へ飛び出す兄を追って、ちょっとした冒険へと出た弟。呼び止めるつもりが、一緒に遊んでいるダイダの姿には後の様子とのギャップもあり和む。

本話数は本パートながら、天候による場面転換に、特訓した治癒魔法でボッジを治す流れと成長の様子がコンパクトにまとめられている。城に戻った後には、母親のヒリングが兄弟を叱らずダイダの行動を褒めるのも良さがある。過去を振り返ったときに、こんなこともあったよなと語り合える思い出話のようなエピソード。

 

お兄ちゃんはおしまい! #9『まひろと年末年始』

 

 
©ねことうふ・一迅社/「おにまい」製作委員会

脚本:横手美智子/絵コンテ:黒沢守/演出:秋山泰彦/総作画監督:今村亮、山﨑匠馬/作画監督:内田百香/青木駿介/くまがぱんいち

同名漫画が原作の本作からは、本記事の投稿時期にもピッタリなクリスマス・初詣の年末年始エピソードを選出。

夜のイルミネーションのシークエンスでは、約2分間に渡り台詞なし(劇伴のみ)で彼女らの微笑ましいやり取りを映す。まるでキャラの台詞が聞こえてくるような。
これまでは背景しか写していなかったであろうスマホカメラのフレーム内に収まる妹と友人の姿が。この一連の原画は、松隈勇樹氏→中井杏氏→みとん氏がリレーで担当。本作で頭角を現したアニメーターがピークのシークエンスで一堂に会するのが感慨深い。特に中井氏によるスマホのインカメラで映した画面内とスマホを持つ手元が連動した芝居作画が斬新で印象的だった。

定番の年末年始イベントだが、本作は引きこもりだった主人公だからこそ、大切なときを大切な人と過ごす意味合いも本人にとって大きな変化となったであろう。

 

薬屋のひとりごと #4『恫喝』

 

 

©日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会

脚本:柿原優子/絵コンテ・演出:ちな/総作画監督:中谷友紀子/作画監督:もああん

同名の小説が原作で、とある国の後宮で薬師として働く猫猫の物語。事前のスタッフ告知から話題を呼んだこの回を選出。ちな氏ともああん氏のタッグは、TOHO animation ミュージックフィルムズのMV企画『でたらめな世界のメロドラマ』(2023)以来である。

ちな氏が過去に絵コンテ・演出を手掛けた『ヤマノススメ Next Summit』(2022)#7 Bパートなどと同様、奥行きのある構図でのキャラの表情の省略が潔い。また、細やかな芝居作画も目に残る。立ち上がりや食事、ロングショットでの歩きなど地味ながら一手間掛かる作画をカットを割らずに映す。

本話数では数日の時間が流れるが、その日々の繰り返しをテンポよく、かつ変化を対比的に見せている。猫猫が部屋の外へ追い出されるくだりでは、最後に扉だけのカットを映すことで、追い出されていないことが分かるオチの付け方が上手い。

 

呪術廻戦 #40『霹靂』

 

 
©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会

脚本:瀬古浩司/絵コンテ・演出:土上いつき/総作画監督:山﨑爽太/作画監督:丹羽弘美、石井百合子

第1期から監督が御所園翔太氏に変更し、各アニメーターや演出家の個性がさらに前面に出た第2期。非常に悩ましい話数が並ぶ中で、本話数を選出。

アクションは原作からの追加描写が大半だが、その多くを温泉中也氏とグレンズそう氏の2人が手掛けたことで、一貫性のある回にまとめられている。また、渋谷という土地と超人的な能力を上手く組み合わせることで、リアリティも生まれている。加えて、原作者の芥見先生が作画に造詣が深いこともあり、Web系作画の文脈を感じさせる要素が随所にちりばめられているのも作画ファンには嬉しいところだろう。

本作は何かと話題性があったが、既に第3期の制作も発表されている。同制作ラインと思われる『チェンソーマン』の劇場版も控える中、今後どうなっていくのか行く末を見届けたい。

reme-aniro9.hatenablog.com

 

進撃の巨人 The Final Season #93『長い夢』

 

 
©諫山創講談社/「進撃の巨人」The Final Season製作委員会

脚本:瀬古浩司/絵コンテ:林祐一郎、今井有文/演出:林祐一郎、五十嵐季旺

2013年から放送開始した本シリーズも10年の時を経てついに完結。物語終盤の本話数を選出。

決死の覚悟を無に帰すような地獄に次ぐ地獄。見ているこちらまで辛くなってくるような展開が待ち構えている。声優の悲痛な演技がよりドラマを引き立てる。あくまで個人の印象だが、長期作品だと作り手・演じ手が込める熱量がより大きなものになっているのではないかと。

これまでの話数と同様に作画と3DCGを融合した画面で見応えがあるものに。そして、何よりWIT STUDIO時代でアクションアニメーターとして大きく貢献してきた今井氏が満を持して参加。本作最後の立体起動アクションを手掛けた。共に長い時を過ごしてきた作品だからこそ得られる感動がそこにはある。

 

葬送のフリーレン #14『若者の特権』

 

 
©山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

脚本:鈴木智尋/絵コンテ・演出:飯野慎也/総作画監督:長澤礼子/作画監督:新井博慧、率華

同名漫画が原作、初回が金曜ロードショーでの放送も話題となった本作。連続2クールの内、第1クールから本話数を選出。

絵コンテ・演出は、『Dr.STONE』シリーズ監督の飯野氏が本作初参加で担当。また、主にMVやPV・CMなど短尺の映像を手掛けるENISHIYAがグロスで制作を手掛けている。
本話数は贈り物を通じて大切な人に歩み寄るエピソード。本作では、過去の功績や想いをどう後世に繋いでいくかということにも焦点が当たっているが、今回は形に残るものとして身に纏っていく。その意匠通りの意味でなくとも、大切な想いであることには変わりない。
ザインという大人の人間がパーティーに加わったことで、まだ若いフェルンやシュタルクとは違う俯瞰的な視点が増えて物語にも面白味が増している。

映像的にも他話数と同様に丁寧な芝居作画でキャラの感情の機微が伝わるものに。ピークとなるフリーレンが上空で魔法を使って落した指輪を見つけるシーンは、風を受けて靡く髪やマフラー、肩や腕の各パーツが立体的かつ細やかに動かされており、大切なシーンの中で目に残るものとなっていた。

 

天国大魔境 #10『壁の町』

 

 
©石黒正数講談社/天国大魔境製作委員会

脚本:窪山阿佐子/絵コンテ・演出:五十嵐海/作画監督竹内哲也

同名漫画が原作であり、原作者の石黒先生はアニメーターの佐藤利幸氏と大学時代に同サークルだったいう本作からはこの話数を選出。

冒頭から五十嵐氏によるコミカルなキャラ作画からも普段の回とは一味違うことを予感させる。次第に雲行きが怪しくなっていく本編。これまで五十嵐氏が担当した『SSSS.GRIDMAN』(2018)#9や『SSSS.DYNAZENON』(2021)#10などと同様、異質な空間の魅せ方が存分に活かされている。今回こそ(作品内における)現実世界だが、男性の人権が奪われた町を舞台に、ヒルコの能力によって辺り一面が氷漬けと現実離れしている。タッチの異なる画面から目が離せない。ヒルコ戦のイメージ図のカットではアニメ化に当たって原作からより視覚的に理解しやすいような工夫が施されているのもポイント。

原画には吉成鋼氏や伍柏諭氏、荒井和人氏、菅野一期氏なども名を連ねており、サプライズ感も欠かせない。

 

遊☆戯☆王ゴーラッシュ!!#62『再会』

 

 
©スタジオ・ダイス/集英社テレビ東京KONAMI

脚本:竹内利光/絵コンテ・3D演出:橋本直人/演出:駒井克行/3Dアニメーター:安藤義信/総作画監督作画監督・一人原画(第二原画あり):松下浩美

『遊☆戯☆王SEVENS』(2020~2022)からの続編となる本作からは、その両作品が交わる本話数を選出。

只野和子氏と共同でキャラクターデザインを務める松下氏が初の単独で作画監督を担当。終始コミカルで活き活きとしたキャラの表情や仕草が楽しい。また、絵コンテもそうした技量のある松下氏に合わせてか、普段の回ではあまり目にしないロングショットや広角の構図なども用いられ、ドラマにより深みを増す。

物語としても、前エピソードで猫の姿になるという破天荒な流れだったのがここで未来・過去と繋がる展開に。誰が宇宙船に乗っているのかハッチを開けてみないとわからない、まさしく"シュレーディンガーの猫"。人知れず背負ってきたものの重み、そして、それに対しての救いが見える話数。

 

ONE PIECE #1074『モモを信じる ルフィ最後の大技!』

 

 
©尾田栄一郎集英社・フジテレビ・東映アニメーション

脚本:田中仁/絵コンテ:細田雅弘、ホネほね/演出:道端菜名実/作画監督:久田和也、ホネほね、杉田柊

2019年から始まったワノ国編がついに完結した本作、2023年は四皇やその側近との戦いもクライマックスとなり、長期TVシリーズとは思えない画面を毎回のように目にすることができた。そんな中で本話数を選出。

本話数の見所はAパート後半の約4分間に渡るアクション。絵コンテを当時はまだ大学生だったホネほね氏が手掛けた。ニカの能力覚醒後の回である#1071や#1072はコミカルさが目立ち会話パートもある一方、本話数ではシリアスめに台詞もオフ台詞にすることでテンポを損ねず集中して観られる作りになっている。また、肝心のアクションも上空の雲も活用し移動範囲を拡大したアクション、縦横無尽のカメラワーク、雷を光源としたライディングなどによって刺激的な画面を堪能できる。

ただ、ワノ国編を振り返ると完結まで放送休止せず*1原作に追い付かないようにした結果、戦いが長期化してしまったのは称賛できない点である(こればかりは現場のスタッフではどうしようもないところ)。正直いち話数としての完成度は過去の石谷氏担当回(#1015など)に軍配が上がる印象。間延びがないコンパクトかつ濃密な回は、いちからの再アニメ化が決定したWIT STUDIO版で期待したい。

 

惜しくも10選から外れてしまった話数

 

推しの子 #7『バズ』
川越ボーイズ・シング #9『いつかのアイムソーリー』
BORUTO-ボルト- -NARUTO NEXT GENERATIONS- #293『別れ』

 

最後に

 

2023年は例年に比べるとやや視聴本数は少なめ。その中でBORUTOの第1部完結、ONE PIECEのワノ国編完結、進撃の巨人完結と馴染みのある作品がひと区切りがついた1年だったなと。
2024年も既に話題作が次々と発表されているので楽しみ。

今年もありがとうございました。2024年もよろしくお願いします。
今回はこんなところで、それではまた。

*1:総集編は2023年で5回あった