こちらも2020年総括の記事。
各10選...とまではいかなかったので、計10選です。
選出に当たってのルールは至ってシンプルに2020年公開されて観たもの。
それではどうぞ。
※掲載は作品名の五十音順、スタッフ名は敬称略含む
一部本編のネタバレが含まれます
OPED
恋する小惑星 OP『歩いていこう!』
©Quro・芳文社/星咲高校地学部
天文班に地質班と違う分野であっても、好きなことを追求していく根っこの部分は同じで最終的には互いに交わることが、画面分割と昼⇒夕方の時間経過によって巧く表現されているなと。言葉は無くとも約90秒の尺で作品のストーリー性が伝わってきます。
加えて可愛らしいキャラデザに丁寧な芝居作画が乗っかることで映像としての魅力の後押しになっている印象です。顔が見える角度でも敢えて引きの画を使うのも中々チャレンジング。
恋する小惑星 ED『あの星の向こうに』
©Quro・芳文社/星咲高校地学部
歌:木ノ幡みら(cv:高柳知葉) 作詞:伊賀拓郎 作曲・編曲:伊賀拓郎
かぐや様(第1期)の『チカっとチカ千花っ♡』以降、短い尺でのデイレクションを中心に活躍の場を広げている中山さん。直近ではラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 第7話での彼方のダンスパートも手掛けていましたが、シネスコ・浅い被写界深度・キャラのモチーフとなるモノに焦点を当てるといった特徴があるように思えます。
このEDでは各キャラが大事そうに見つめるモノの意味を本編の流れと共に追えるのが良いですね。また、そのモノ自体も他者との繋がりから得られたもので、最終的には揃って星空を見上げる構図も誰かとだからこそ見られた景色・叶えられる夢という意味合いが強く感じられます。あと、OPが夕方で終わり、EDが夜というのも流れとして一貫性があって良い構成だなと。
呪術廻戦 OP1『廻廻奇譚』
TVアニメ『呪術廻戦』ノンクレジットOPムービー/OPテーマ:Eve「廻廻奇譚」
歌・作詞・作曲:Eve 編曲:Numa
絵コンテ・演出:山下清悟 総作画監督:平松禎史 カラースクリプト・作画監督:Moaang
みんな大好きyama OP。NARUTOや双星の陰陽師に続き、ジャンプ作品との親和性の高さを再証明。作品のファンであるEve作詞の歌詞はもちろん、映像からも作品の要素をチラつかせた作りは原作読者なら思わずニヤけてしまうんじゃないでしょうか。
死滅回遊魚であるタテジマキンチャクダイの幼魚や環状線など考察の余地を残した抽象性、矢継ぎ早にオーバーラップで今後の展開を予期させるカット切り替えと、原作読者もアニメ組にも楽しめる絶妙なバランス感。後者についてはソシャゲCM的な手法ですが、約90秒という尺でキャラ紹介になりがちな最初のOPでテンポ良く情報開示するなら、これが最適解の一つだと思います。
あと個人的なイメージですが、山下さんディレクションは明るくハッピーなものより、影を落としたような負の感情から立ち上がるタイプの作品の方が相性が良い気がしますね。
呪術廻戦 ED1『LOST IN PARADISE feat. AKLO』
TVアニメ『呪術廻戦』ノンクレジットEDムービー/EDテーマ:ALI「LOST IN PARADISE feat. AKLO」
歌:ALI 作詞:LEO、LUTHFI、ALEX、AKLO 作曲:ALI、AKLO 編曲:ALI
絵コンテ・演出:長添雅嗣 原画:五十嵐祐貴
普段は実写作品の映像作家である長添さんが手掛けたベースに五十嵐さんの一人原画によるラフでいてポップなキャラ達が目を引く映像。主線を飛び出すカラフルな色は型にはまらないでいいという肯定感が感じられます。
本編が"死"と直面する重い内容であるからこそ、このEDの後にあるじゅじゅさんぽと併せ一種の清涼剤としての役割が果たせているなと。現実世界にも通じる日常を感じさせるのは、実にジャンプアニメ的で好み。
また、主題歌を務めたALIは2016年結成渋谷発のメンバー全員が混血、ファンクやヒップホップと様々なジャンルを組み合わせた音楽性という異色のバンドで、その都会的・多様性が作中で原宿など実際の土地や、様々な形で呪霊と関わりを持つ人物達が登場する世界との親和性が高い。
因みにこのEDのキャプを使ったTシャツも売れ行きが良いらしく(先日ZOZOTOWNを覗いたらランキング上位でした)、映像という媒体から外の世界に飛び出す様子は何だか嬉しくなりますね。
Fate/Grand Order 第2部後期OP『躍動』
「Fate/Grand Order」第2部後期オープニングムービー
歌・作詞:坂本真綾 作曲:古閑翔平 編曲・演奏:ユアネス ストリングス編曲:河野伸
絵コンテ・演出:榎戸駿 作画監督:山田有慶
ゲームからはこのOPを。いちFGOプレイヤーの自分ですが、この映像を目の当たりにして高揚感が得られない人が果たして存在するのかと。
第二部の結末を知った上で描かれた楽曲の歌詞を含め、恐らくストーリーを進めていくことで意味が分かる要素が随所に見て取れます。まゆとかげが制作した映像の根底には前述の山下さんからの影響が少なからずある気がしますね。
楽曲も本当に好きでイントロで泣かせにきますね、はじめにストリングスをロックサウンドと掛け合わせた人は偉大。
あと、いつか別途記事にするつもりですが、こうした短い尺でのプレイヤー向けに振り切った映像がFGOアニメ化の最適解だと思います。
BORUTO-ボルト- -NARUTO NEXT GENERATIONS- ED14『セントラル』
歌・作詞・作曲:坂口有望
絵コンテ・演出・作画:伊藤香奈
いちNARUTOファンとしては、選ばずにはいられなかった。
楽曲の時点から作品を意識した要素が散りばめられていますが、それに映像を付けるに当たってのチョイスが素晴らしいなと。作品に対する理解が無いとまず作れない映像だと思いますね。
世代間の繋がり・時間の積み重ねを感じさせてくれるエモーショナルなED。
BORUTO ED14
— リミナ (@reme_yg) 2020年11月9日
絵コンテ・演出・作画:伊藤 香奈さん#BORUTO pic.twitter.com/1D4toPlcT3
マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝 ED『アリシア』
©Magica Quartet/Aniplex・Magia Record Anime Partners
歌:ClariS 作詞・作曲:毛蟹 編曲:湯浅篤
実写の背景に作画のキャラを載せる独創性が目を引くED、魔法少女も普段は至って普通の女性であることを強調させています。また、その背景も夜景を使うことでキャラが馴染みやすいと共に、どこかいろは達と距離を置き一人で戦おうとしたやちよの孤独さも表されているなと。
映像では一人狭いエレベーターに取り残され、止めどなく上がっていく階数と押し寄せる水、溢れ出さんとする感情を前にして次第に追い詰められていくやちよ。それでもラストカットで傘を片手に歩き出す姿からは、如何に辛い目に遭おうと立ち止まる訳にはいかない覚悟が読み取れます。
PVMV
『GOTCHA!』
【Official】Pokémon Special Music Video 「GOTCHA!」 | BUMP OF CHICKEN - Acacia
歌・編曲:BUMP OF CHICKEN、作詞・作曲:藤原基央
監督・絵コンテ・演出:松本理恵
2018年の『ベイビーアイラブユーだぜ』以来の組み合わせ。初代のTVで流れていた『スタンド・バイ・ミー』を想起させる映像に始まり、続々と登場する各シリーズの人物とポケモン達、例え全てのシリーズをプレイしていなくとも惹かれるものがあるんじゃないでしょうか。
映像の作りとしては、膨大なキャラクター数をタイプ別のジムリーダーや四天王、悪役、博士などとカテゴライズしてまとめた上で音楽とテンポ良く合わせることで、画面内の情報量を抑えつつも追いきれない分を繰り返し観たくなる仕組みになっています。
それでいて、このMVの主人公である現代風の男女2人が90年代風のポケモンとの出会い・別れを通して成長するストーリー性が重ねられていることで、約14年間に数多くのプレイヤーが残した軌跡を改めて一から辿ることができる。そんなこれまでの積み重ねがあるからこそ実現したMVであり、文句の付け所が無し。パーフェクト。
DATS 『Showtime』
歌:DATS 作詞:Wataru Sugimoto 作曲:DATS
Director & Editor: OSRIN (PERIMETRON)
Animation Director: Yoshiki Imazu
『ノー・ガンズ・ライフ』EDも務めた4人組ロックバンドDATSの楽曲に、King Gnu『白日』のMVを制作したPERIMETRON所属の映像作家であるOSRINが手掛けた映像。
一人の女性を愛してしまった悪魔の行く末を儚くも美しいタッチで描かれており、思わず引き込まれる映像です。ダンスを踊るキャラの動きは恐らくロトスコープですが、抽象的なタッチのため、不自然さも無く作品に溶け込んだ印象を受けます。
TAMAYA アニメCM 「託された想い篇」
TAMAYA アニメCM 「託された想い篇」80秒 玉家質店 original animation cm full
再生数が少ないのでもっと広まって欲しいなという意味合いも込めてこちらのCMを。
大切なモノのために困難に立ち向かう一人の女性の生きざまが描かれた映像。鮮やかな色彩と壮大な音楽、カメラワークがそれを引き立てます。
アクション作画のイメージが強い管野さんですが、こうしたアプローチの映像も作れるんだなと新たな発見。今後のお仕事も楽しみになりました。
それにしてもこのCMで宣伝の役割が果たせているのかは謎...。
最後に
という訳で恋する小惑星と呪術廻戦がOPEDの両方を選出してしまいましたが、毎話飛ばさずに観たくらいには気に入っていたので仕方無し。
それにしても昨年当たりから本当にアニメMVが増えてきましたね、とても追いきれない量なので、どこかでまとめているサイトなどがあったら教えて欲しいくらいです。
増加の要因としては、元ボカロPや歌い手が活動の場をニコニコ動画からYouTubeに移し、顔を出さない本人の代わりに需要が高まったためだと思われます。
そんな中でこむぎこ2000などの若手クリエイターと組んで作品を創り上げ、より一般の人の目に触れるオープンの世界に広まるのは良い流れだなと。
ここには上げきれませんでしたが、渡邊巧大さんの『お勉強しといてよ』やちなさんの『それを愛と呼ぶだけ』、山本健さんの『約束』といった普段はTVアニメで活躍するアニメーターが先陣を切ってMV制作を手掛けることも目立ってきました。尺が短い分、リソースをコントロールして作家性をより出しやすいのだと思います。
そして今年は何と言ってもYOASOBI『夜に駆ける』。アニメMVでありながら、その再生回数は1億回超えで紅白にも出場。今後もアニメMVの需要は高まっていくばかりな気がしてなりません。要注目のコンテンツです。